江戸川コナンよありがとう

※以下の文章は『劇場版名探偵コナン ゼロの執行人』に関する大きなネタバレがあります。まだご覧になっていない方はすぐにブラウザバックして劇場へGO!

 

『劇場版名探偵コナン ゼロの執行人』を観ました。個人的に今年度の映画はものすごく心を打たれてしまったので感想文を書きます。考察ではありません。感想文です。よろしくな!

どういう感じに書いていくか迷うんですけども、とりあえず心に刺さったところを書いていきます。

 

1.高木刑事

高架下で高木刑事とコナンくんが会話してるシーンね…あれたぶんコナンくんが詳しい話を聞くために高木刑事を呼び出したんだろうけど、めちゃくちゃ良くないですか?

小学一年生に呼び出される成人男性(独身・警視庁勤務)。優しい。

しかも話が終わったら割と一方的に帰っていくコナンくん。見送る高木刑事。

 

高木「気を付けて帰るんだよー!」

 

優しい!!!!!

 

高木刑事はめちゃくちゃ優しいんすよ…。ていうかコナン世界の大人(レギュラー陣)が子ども達に優しいのめちゃくちゃイイですよね…優しい世界だ…(語彙力)

 

2.風見裕也

風見裕也についての話をします。

まず今回の『ゼロの執行人』は題の通りゼロ=降谷零/安室透(以下降谷、敬称略)が主となって話が進んでいくし、私も降谷の女になるつもりで劇場に行ったんですね。

 

(ちなみに『執行人』は公安警察としての「降谷零」の側面が大きかったのと、私が「ふるや」という言葉の響きが好きなので本文章では降谷と呼ばせていただきます。)

 

降谷の女になるつもりで劇場に行ったのに、映画館を出たら風見裕也の女になっていた…!?

何が起こったのかさっぱりわからなかったんですけど、ちょっと整理しようと思います。

風見裕也は『純黒』で登場したし、単行本94巻(FILE.6 「ストラップを探せ!」)でも本編デビューを果たしましたね。

『純黒』の時の風見裕也は超威圧的で「うわっ…このおじさんめっちゃ怖…」とか思ってたんですけど、今回の…今回の『執行人』では…コナンくんに盗聴器を仕掛けられたことに気付かず降谷にめっちゃ怒られるという失態。直後の橋でコナンくんにこぼす降谷についての言葉。日本橋で口にした降谷への畏れ…。

風見裕也に対する得体のしれない感情が生まれてしまった…!

たぶんなんですけどこういうことなんだと思います。

 

作中で風見裕也の人間的な葛藤が見られてめちゃくちゃ嬉しかったんですよね。

もちろんコナンくんも降谷も謎を解くうえで、あるいは仕事上での善悪の葛藤や救えなかった存在について絶対悩んでるはずなんです。なんですけど、彼らは推理力や運動神経や運も含めて、ある種超人的な人物だから感情移入しきれないところがある。

赤井秀一もそのたぐいのカテゴリですね。

でも風見裕也とか警視庁捜査一課強行犯三係の皆さんとかはどちらかというと一般人寄りというか…。

もちろん正義感があり職務を全うする素晴らしい人間なんですけど、思考がふつうの人だからめちゃくちゃ共感できるし、そういうふつうの人が善悪を司る職務の中で、人を救う/救えないの地獄の葛藤をしているとめちゃくちゃイイです…。

 

だから『執行人』で風見裕也の人間的な葛藤が描写されていてものすごく惹かれてしまったんですね…たぶんですけど…。

今後の展開で風見裕也が降谷的思考になったらめちゃくちゃつらくなってしまう。

風見裕也はあの葛藤を持ったことを忘れないでいてほしい。

もしも降谷的思考になったとしても、かつて自分がそうしたことで葛藤した事実を永遠に忘れないでいてほしい。降谷に対して抱いた畏れをずっと覚えていてほしい。

 

 

あとコストコですよ。作中の表記だとコスドコになるんですかね。コスドコ。

風見裕也はコスドコで何を買うの???????

風見裕也って一人暮らしなの??????一人暮らしでコスドコの物量を使い切れるのか?????????????風見裕也のことを知りたい。

風見裕也まじ何者なの。

 

風見裕也とコスドコの親和性に気が狂った私はコストコのHPに飛んだ。

http://www.costco.co.jp/p/?lang=ja

 

 

待って!?コストコって法人会員制度もあるの!?

じゃあ公安部でコスドコ会員になって年会費3850円(税抜)ワンチャンあります!?

 

 

いや公安がコスドコ法人会員なわけないだろ。いいかげんにしろ。

 

安室さんと梓さんがコスドコ行ってるのはわかる。似合う。業務サイズだから合理的だし。ポアロだし。

でも何!?風見裕也とコスドコ!?なんで!?なんで!?かわいい!!愛おしい。

風見裕也さぁお前は「降谷さんのことが怖いです…」って言ってますけど私は風見裕也のことが怖いです。なんなんですかそのコスドコ会員証はなんなんですか。

コスドコ会員、風見裕也(30)。怖いです。

まさか降谷との棚越しの会話をするためだけに会員証を作ったわけではないでしょう。

風見裕也は生活用品をコスドコで揃えているんですか?買いだめしてるの!?

忙しいもんな!!消費期限には気を付けろよ!!好きだ!!

 

風見裕也がコスドコの会員証を財布にしまっているのかが気になる。もしも風見裕也がコスドコの会員証を財布にしまっている派だったら『純黒』のちょいヤバめ威圧系風見裕也を見ても「※財布にはコスドコの会員証がある」という前提でめちゃくちゃ笑顔になれる。愛おしい。この気持ちはいったい何。

 

『純黒』でキュラソーの捜査権限を捜査一課から奪うシーン。風見裕也の財布にはコスドコの会員証を財布にしまっている。

 

観覧車で両手に手錠をかけられたキュラソーに脚で挟まれ窓ガラスにしたたかに顔面を打ち付けられる風見裕也の財布にはコスドコの会員証。

 

気を失い、コナンくんに「おじさん!起きて!」と叫ばれる風見裕也の財布にはコスドコの会員証。

 

『執行人』で鼻の頭に絆創膏を張っている風見裕也の、公園の東屋で降谷にめっちゃ怒られる風見裕也の、日本橋で降谷に対する畏れを口にする風見裕也の財布にはコスドコの会員証。あまりにも愛おしい。愛おしすぎて気がふれそう。そのあまりの愛おしさから今後風見裕也のことは「愛おし爆弾」と呼ぶことにします。

 

 

あとラスト直前の、愛おし爆弾が橘弁護士に羽場の居場所を書いたメモを渡そうとするシーン。

愛おし爆弾が振り払われることを予想だにしていなかった表情をしていて、彼の無自覚の傲慢さを感じてしまってめちゃくちゃ興奮してしまった。

そして降谷に「どんなに嫌われてもきっと彼女を守れ。それが…」と言われ、返事をする愛おし爆弾。「公安です。」

ここ!ここです!!ここの風見裕也の表情で完全に風見裕也の女になった自覚がある。ここで風見裕也の意識的成長が見られて…嬉しかった…ありがとう……。

 

愛おし爆弾って呼ぶと緊迫感/Zeroになるのでやっぱり風見裕也と呼ぶことにします。

 

なんていうか『執行人』というより風見裕也についての記事になってしまったな…

まさかここまでとはな…。

 

3.降谷零/安室透

降谷零についての話をします。

『執行人』の降谷零を見て一番に思ったことが「怖い」なんですよね。いや私は風見裕也ではないんですけど…。ていうか江戸川コナンに対しても「怖い」って思っちゃったんですけど…。小学1年生の時に父親に単行本第1巻を買ってもらったことが私と江戸川コナンとの出会いで、それから15年間ずっと江戸川コナンは私の憧れだったのに…江戸川コナンになりたかったのになんで私は今回江戸川コナン(&降谷零)のことを怖いと感じた?なんでだ?

 

それはたぶん、降谷零とコナンくんが不特定多数の他人のためにあんな風に行動できることが荒唐無稽すぎて、私自身に無い感情すぎて怖くなってしまったんだと思う。

不特定多数の他人という概念=日本のために、法を犯して秩序を守る人間離れした降谷零という超人に恐怖を覚えてしまったからこそ、人間らしい葛藤の描写があった風見裕也に惹かれてしまったのは前述した通りなんですね…。

 

コナンくんはどう思っているんだろうか。法を犯して秩序を守る降谷零のことを、江戸川コナンはどう思っているのだろうか…。私にはわからない…だって私は江戸川コナンではないから…私は江戸川コナンにはなれないから…。

 

でも日本橋での降谷零の表情は確かに…彼の葛藤というか、降谷の感情の機微が垣間見られてすごくよかったです。胸が締め付けられるこの感情はなに。

 

スパイとしての安室透が赤井秀一を憎むきっかけとなった件の真相を知り、彼がその時どんな葛藤を抱くのかが見たい。

スコッチの死のきっかけは(間接的ではあるが)自分にも一因があったこと、そして憎んでいた男が自分に真相を悟らせまいと嘘をついていたことを知ってしまった時の人間としての降谷零の自我を見たい。

 

人間としての降谷零がどんな顔をしてどんな声でどんな言葉を話すのかが知りたい。

人間としての降谷零を知りたい。超人が人間になるところを見たい。

 

降谷零の自我が爆発するところを見たい。

 

もう私には降谷/安室/バーボンのことが何もわからない。『純黒』を観てちょっとわかった気持ちになってたけど『執行人』観たらまたわかんなくなった。助けてほしい。

でもやっぱり…降谷零としての彼が幸せに生きてほしいという感情がある。

スパイとして生きるのは見ててめちゃくちゃつらいですよ…。

いや私につらいとか思われても降谷さん困るよな。国民の、日本のためにあんなに頑張ってくれてるのに私が降谷さんの仕事をつらいとか言って否定したらダメだろ…。降谷さん…降谷…!!

降谷の幸せが日本の平和だと仮定すると、降谷が本当の意味で「あ~~めちゃくちゃハッピー!!!幸せ!!!!わははははは!!!!」ってなることは来るのか不安。

いや私は降谷さんのことをなんだと思っているんだよ。

 

 

降谷零や江戸川コナン赤井秀一のことを「なんかスゴイひとたち」っていう言葉で表現したくないんてすよ。いや3人とも物凄いんだけど。でもあれだけすごくても人間だし、彼らも人並みに傷ついたり悩んだりすることはあるだろうし。

でもそういうところ他人には見せなさそう。コナンくんはともかく降谷と赤井は他人に涙も弱味も見せなさそう。

コナンくんはギャグパート(現場に入って小五郎に怒られた時とか)では涙は見たことはあるけど本編では涙を見たことないし降谷と赤井は言わずもがなだし…。

いや正義の味方は涙を流さないんだけど…でも…怖いよ…。

 

彼らが彼らの信じる正義を突き詰めたら自己犠牲になりそうで怖い。

まあコナンくん/新一は蘭がいるからそこまでは心配していないんだけど、降谷零は正義を突き詰めた結果最終回とかで死にそうで怖い。本当に怖い。『執行人』の降谷の恋人のくだりを見てめちゃくちゃ怖くなってしまった。

だって冗談とかじゃなくて、本気で…心からの言葉で「僕の恋人は…」って言っていたからもうどうしようもなく怖くなってしまった。

降谷が降谷の信じる正義をこのまま貫いたら降谷の幸せはどうなる?

降谷が命を懸けて日本という概念を守っても、日本は降谷を守ってくれる保証はない。

正義の味方は不特定多数の人間を守ってくれるけど、じゃあ正義の味方のことは誰が守ってくれるんだ?

EDの神曲福山雅治氏の「零‐ZERO‐」にこういう歌詞があるじゃないですか。

 君を守りたい

 それでも守りたい その笑顔

 そのために時として

 悪になったとしても

でもたぶん降谷にとっての「君」って特定の個人じゃなくて、不特定多数の日本人=「君」じゃないですか。それは日本国籍を持つものとしてスゴクうれしいんですけどもね、降谷の笑顔は誰が守ってくれるんですか?って話なんですよ。降谷の笑顔は誰が守るんだよ。降谷の存在を知らない有象無象の国民はともかく、降谷/安室のことを知っている人間たちはお前に笑顔でいてほしいに決まってんだろ。視聴者全員が降谷零に笑顔でいてほしいに決まってんだろ!!(号泣)

しんどい。降谷零はしんどい。なんで?なんで?福山雅治氏の解釈は神。

 

いや降谷の幸せとか言ってそんなもの私の主観でしかないんですけどもね。降谷…降谷ァ…。降谷の幸せってなに…わかんねえ……わたしは降谷じゃないから降谷が本当に幸せになるためにどんなことをしたらいいのか皆目見当もつかねえ。

降谷を幸せにし隊。

 

 

閑話休題

羽海野チカさんの「ハチミツとクローバー」(集英社)9巻にこういうセリフがあるんですね。

 

 

「わかんないんです…ホントは…

 私なんかに…………彼女に何かしてあげられる事なんてあるんでしょうか!?

 彼女を見ててふっと すごく遠く感じたんです

 背負ってるものが違いすぎる…覚悟っていうか…

 ありきたりなコトバなんだけど ほんとうに 世界が違うんだ……って」

「…うん そうだね みんな多分そう思ってるよ

 ――で全員で彼女を遠まきにするんだ

  「私にはなにもしてあげられそうにないから」って

 ――で まんまと彼女はひとりぼっちってわけだ」

 

 

『執行人』の降谷零を見てこの言葉が浮かんでしまったんですよ…。

私は降谷を遠まきにしていないか?江戸川コナンのことを遠まきにしていないか?

降谷零が作中で超人ゆえにこれから遠まきにならないか…つらいです。

あ~~降谷零しんどいな!!!!

 

あとはまあコスドコで棚挟んで風見裕也と降谷が会話するシーン、降谷の小麦粉の扱いが地味に雑だったのがめちゃくちゃ興奮しましたね。安室透のときは絶対に小麦粉あんな風に扱わないじゃん。小麦粉の扱いに「降谷零」を感じてしまって死ぬほど興奮する。小麦粉の扱いが雑な降谷零、めちゃくちゃ推せる。

それと恋人のくだりの降谷がハンドルやらに手をかけるシーン、製作者のこだわりが感じられてめちゃくちゃ良かった。

降谷に関してはそれくらいです。降谷。

 

4.演出/その他

演出についての話をします。

私ねえ映画でもドラマでも音が無くなるシーンが好きなんですよ。

拙者、映像作品で緊迫したシーンや重要なシーンでBGMや過剰な効果音が無くなる演出が好き好き侍で候。

『執行人』の中で具体的に言うと、毛利探偵が風見裕也にしょっ引かれた後でコナンくんと安室透がポアロで会話するシーン。車が通り、コナンくんの髪がなびく。最高。

それと、衛星の大気圏突入の瞬間を警視庁屋上から見ているシーン。突入。炎上。無音。神の所業ですよ。

この流れでめちゃくちゃ好きなシーンがあるんですけど、それっていうのが日下部が羽場の自殺を電話で知るシーンなんですね。あの演出が特に…特に好きです。家族よりも強いきずなで結ばれた協力者の死。目眩のするような衝撃、無力感、悔恨、地獄のような慟哭が…も…すごく…よかったです…。あと日下部検事役の川島得愛さんの「は?」が最高でした…。あの「は?」はここ十年で最高の「は?」でした…ありがとうございます……!

 

それから、ドローンを操縦したりルートを割り出したりしたのが灰原さん含む少年探偵団だったのがめちゃくちゃ良かった。今回頑張っていたのは大人だけじゃない、子ども達だって日本を救っていたっていうのが、今後日本を背負って立つのは子ども達なんだぞっていう…日本の未来を託すのはあんなに頼もしい子どもたちなんだぞって感じて少し泣いてしまった(当方成人済)。

 

5.黒田兵衛

黒田兵衛ね……何者なんですか!?!?!?ラムなんですか!?いや!!!!警察機構の中に悪い人いて欲しくない!!!!!!!!(横暴)

まじでラムだれなの!?怖い!!!!!

あのシーン誰に電話してたんですか……あの口の動き…なんて言っているんですか……怖い…いや本当に警察上層部の人間がラムだったら普通につらい。でも黒田兵衛がラムではなかったらひとりでキャンプに来る愉快なおじさんになってしまう。かわいいな……!!

あ〜〜名探偵コナンが怖い。地獄みたいな巧妙な伏線の山が怖い!!!!!

青山剛昌氏…天才……!!!!!

 

6.江戸川コナン

江戸川コナンの話をします。

今回の『執行人』で一番好きかつ心を揺さぶられたシーンっていうのが、クライマックス前・犯人に衛星のパスワードを聞き出すシーンですよ。

犯人が「正義のためならば多少の犠牲はやむを得ない」と言った直後にコナンくんが間髪入れずに「そんなのは正義じゃない!」と否定してくれたことが本当にうれしかったです。コナンくんの正義は本当に真っ直ぐで、揺るぎなくて、そういうところに幼少期の私は憧れたんですね…。江戸川コナンになりたかったです。

成長の過程で私はいつの間にか日下部的思考になっていたことに気づいてものすごくつらくなりました。オタクの自分語りほど見苦しいものはないと思うけどこれは個人の感想文なので許してほしい。

コナンくんが今回、このセリフで犯人の正義感といっしょに私の地獄みたいな倫理観も否定してくれたのがめちゃくちゃ嬉しかった。コナンくんありがとう。制作陣の皆さんありがとう。青山剛昌氏ありがとう。

江戸川コナンは最高だな!!!!!

 

 

 

ここまで書くのにBGMで再生していた『純黒の悪夢』を4周してしまった。

長い文章書くのって大変なんだね…みんなすごいよ…えらいよ…!

クソ長い上に読みづらい文章で本当にすまない。ここまで読んでくださった人が何人くらいいるか謎ですけど本当にありがとうございました。

名探偵コナン大好き!